東京高等裁判所 平成9年(行ケ)278号 判決 1998年9月29日
主文
特許庁が平成四年審判第一三五六六号事件について平成九年六月二三日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
理由
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、二(審決の理由の記載)は、当事者間に争いがない。
二 そこで、本件商標をその指定商品に使用することにより、その出所について混同を生ずるおそれがあると認められるかについて判断する。
(一) 引用商標の著名性について
<1> 《証拠略》によれば、「VOGUE」誌は、一八九二年アメリカで創刊され、一九〇九年からは、コンデ・ナスト社により、ファッション雑誌として発行されるようになり、本件商標の出願当時(昭和五八年一二月)において、アメリカ、フランス、イギリス等で出版され、世界各国で発売されており、古典的かつ世界的な権威を持ったファッション雑誌として、世界的に広く知られていること、並びに、原告は、昭和六三年にコンデ・ナスト社を合併したが、「VOGUE」誌はその後も同様に発行されていることが認められる。
<2> 次に、日本における引用商標の著名性につき検討する。昭和二〇年代から昭和五八年ころまでの間において、以下のとおり、「VOGUE」(ヴォーグ)誌に関する解説、紹介記事、広告等が数多くの書籍、事典、新聞、雑誌等に記載されていることが認められる。
(a) 戦後の入荷、販売部数
《証拠略》によれば、昭和二四年一〇月三日発行の朝日新聞には、「『ヴォーグ』入荷 世界的スタイル誌『ヴォーグ』が十年ぶりに一日入荷した。」と記載されていることが認められる。
なお、《証拠略》によれば、昭和四六年から昭和五五年までの「VOGUE」誌の我が国における月平均販売部数が、英語版で一、二五五ないし一、六六五部、フランス語版で一、六八七ないし三、一三五部であったことが認められる。
(b) 事典類の記載
《証拠略》によれば、昭和三〇年八月三〇日、平凡社発行の「世界大百科事典3」には、「ヴォーグ」の項に、「Vogue 最も知られた流行服飾誌の名。」(九六頁)として二〇行にわたる解説が記載され、《証拠略》によれば、昭和四五年八月二五日、平凡社発行の「アポロ百科事典3」には、「ボーク Vogue フランスの服飾雑誌。」との記載のほかに、アメリカ版、イギリス版にも触れた記載(一八〇九頁)があり、《証拠略》によれば、昭和四六年三月一五日、小学館発行の「大日本百科事典16」には、ボーグの項に、「Vogue 婦人服飾流行雑誌。」との記載と、フランス版、アメリカ版、イギリス版の特色が記載され、「いずれの版もファッション雑誌としては高水準のものを紹介していることでは一致している。」との記載(四四四頁)があり、《証拠略》によれば、昭和四八年二月一日、平凡社発行の「小百科事典」には、「ボーグ Vogue」の項に、「フランスの服飾雑誌。」との記載及びアメリカ版、イギリス版もある旨の記載があり、《証拠略》によれば、昭和四九年八月一日、集英社発行の「外国からきた新語辞典第三版」には、ボーグの項に、「アメリカのファッション雑誌名」との記載(二六六頁)があり、《証拠略》によれば、昭和五六年四月二〇日、平凡社発行の「世界大百科事典3」には、「ヴォーグ Vogue」の項に、「最も知られた流行服飾雑誌の名。」(一一七頁)と記載され、アメリカ版、フランス版、イギリス版についての説明も含めて二三行にわたる解説が記載され、《証拠略》によれば、昭和五六年七月一六日、講談社発行の「写真大百科事典1」の「80 VOGUE ヴォーグ」の欄には、「VOGUE」誌の歴史が詳細に記載され、《証拠略》によれば、昭和五八年五月二五日発行の「大事典desk」には、「ボーグ」の項に、「Vogue 服飾雑誌。ボーグは流行の意。一八九二年フランスで創刊。英米版もある。[特徴]豪華な多色刷りで婦人服の流行を紹介、婦人向けの一般記事もあるが、上流社会のものに限られる。」(一四四七頁)と記載されていることがそれぞれ認められる。
《証拠略》によれば、昭和三四年九月一〇日発行の「現代用語の基礎知識一九五九年版」(八〇三頁)には、ファッション・ブックの項に、「流行雑誌。外国の代表的なものとしては、「ヴォーグ」(Vogue米、仏、英版)・・・等々がある。」と記載され、パターン・ブックの項に、「Vogue Pattern Book」がその代表的なものとして挙げられており、《証拠略》によれば、同じ文献の「外来語の小事典」の章には、「ヴォーグ」(Vogue)の項に、「流行の意。この名前の有名な流行雑誌が出ている。」(八二四頁)と記載され、《証拠略》によれば、昭和五五年一月一日発行の「現代用語の基礎知識一九八〇」には、「ボーグ(Vogue)」の項に、「流行。服飾雑誌の名。」(一二五一頁)との記載があることがそれぞれ認められる。
(c) 服飾関係の事典類の記載
《証拠略》によれば、昭和四三年五月二〇日、婦人画報社発行の「服飾事典」(三四版)には、「【ヴォーグ〔Vogue・・フランス、アメリカ、イギリス〕】一般的に最も名の知られた流行雑誌。」(四七七頁)として解説が記載され、《証拠略》によれば、昭和五四年三月五日、文化出版局発行の「服飾辞典」には、ヴォーグ〔Vogue〕の項に、「『ヴォーグ』といえばファッション誌の代名詞になっているほど。」(四二頁)と記載され、他に、「VOGUE Homme」、「「VOGUE Bambini」の紹介を行うとともに、各誌の表紙写真も掲載され、《証拠略》によれば、昭和四八年四月二五日発行の「田中千代 服飾事典(増補)」には、「なお『ヴォーグ』は、世界でもっとも名高いファッション・ブックの名前でもある。」(七二頁)、「一般的に最も名の知られた流行雑誌。」(七〇一頁)と記載され、《証拠略》によれば、昭和五五年一〇月五日初版発行の丹野郁編「総合服飾史事典」には、「『ヴォーグ(Vogue)』は流行雑誌として一般に知られている。」(三九七頁)などと記載されていることがそれぞれ認められる。
(d) 昭和四二年の日本取材関係の記事
《証拠略》によれば、昭和四二年一〇月六日発行の朝日新聞には、「京都の金閣寺で取材する『ヴォーグ』の一行」との記載があり、その文中に、「世界的なハイファッション誌、フランスの『ボーグ』・・・」との記載があり、《証拠略》によれば、昭和四二年一〇月二一日発行の「週刊新潮」には、「服飾界最高権裁が見た世界に通用する風景」との小タイトルの記載及び「『ボーグ』とは、いうまでもなく、ファッションの中心、パリで発行され、世界の流行を左右するといわれる服飾雑誌の権威。」との記事中の記載があることがそれぞれ認められる。
(e) 文献類の記載
《証拠略》によれば、昭和五〇年六月五日発行の南静著「パリ・モードの二〇〇年」には、「ヴォーグ」の編集長等についての記載があり、《証拠略》によれば、昭和五五年一一月二八日発行の常盤新平ら編「アメリカ雑誌全カタログ」の「ヴォーグ Vogue」の欄(二一二ないし二一四頁)には、「高級なファッション雑誌」、「『ヴォーグ』が上流社会と芸術家に支えられた華やかな社交と風俗の歴史であったことも知った。」と記載されており、《証拠略》によれば、昭和五六年一二月五日発行の常盤新平著「彼女のアメリカ」には、「女の雑誌USA 作家も広告も超一流好み『ヴォーグ』」(一九ないし三五頁)との項目で、「ヴォーグ」誌に関する詳細が記載され、《証拠略》によれば、昭和五七年六月二〇日発行のアーネスティン・カーター著「ファッションの仕掛け人」には、「ヴォーグ」誌とその歴史を支える編集長の物語が記載され、《証拠略》によれば、昭和五八年一二月一日発行の「BRUTUS」には、「雑誌が時代を踊らせた日。」の題の下に、「コンデ・ナスト・サーカス団。」、「ヴォーグを創った野心家たち。」、「ヴォーグはファッションをアートにした。」、「ヴォーグに”時代”を吹き込んだ男。」についての記事(五一ないし五七頁)が掲載されていることがそれぞれ認められる。
(f) フランソワーズ・モー美容編集長の訪日関係の記事
《証拠略》によれば、昭和五二年二月八日発行の「週刊女性」には、「『パリ・ヴォーグ』美容担当編集長フランソワーズ・モーさんに単独インタビュー」との特集記事が掲載され(一四二ないし一四五頁)、「VOGUE」誌の表紙写真も「モード界の権威『パリ・ヴォーグ』表紙」として掲載され、《証拠略》によれば、昭和五二年一月一九日発行の「読売新聞」には、「『ボーグ』編集長F・モーさん」の欄で、フランスのファッション誌「ボーグ」がデザイナー芦田淳との対談を通じて取り上げられ、《証拠略》によれば、昭和五二年一月二〇日発行の「朝日新聞」には、「パリ・ヴォーグ誌美容担当 モーさんのおしゃれ観」についての記事が掲載され、《証拠略》によれば、昭和五二年四月一日、文化出版局発行の「ハイファッション」には、フレンチ・ヴォーグ誌美容編集長 フランソワーズ・モーのインタビュー記事(一八六頁)が掲載されていることがそれぞれ認められる。
(g) 「ヴォーグ六〇年展」関係の記事
《証拠略》によれば、昭和五五年三月一日発行の「芸術新潮」には、「特集 回想『ヴォーグ六〇年』池田満寿夫編・解説」の特集記事が掲載され、《証拠略》によれば、昭和五五年三月六日発行の朝日新聞(夕刊)に「ヴォーグ六〇年展」の広告が掲載され、《証拠略》によれば、同日発行の読売新聞(夕刊)に「ヴォーグ六〇年展」の広告が掲載され、《証拠略》によれば、同日発行の毎日新聞(夕刊)に「ヴォーグ六〇年展」の広告が掲載され、《証拠略》によれば、昭和五五年三月一四日発行の朝日新聞に「ヴォーグ六〇年展」の広告が掲載され、《証拠略》によれば、昭和五五年三月七日発行の日本経済新聞(夕刊)には、「衣装や写真で見るファッションの流れ 英国版『ヴォーグ』六〇年展」に関する記事が掲載され、《証拠略》によれば、昭和五五年三月八日発行の読売新聞には、「ファッションの六〇年」と題して、「ヴォーグ六〇年展」の内容を紹介する記事が掲載され、《証拠略》によれば、昭和五五年三月一三日発行の朝日新聞には、「ヴォーグ六〇年展」に関するインタビュー記事が掲載され、その中で「発行部数二五〇万。ファッション雑誌としてもっとも長い歴史と広い読者層をもつ『ヴォーグ』の写真と衣装展が開かれている」と記載され、《証拠略》によれば、昭和五五年四月一二日発行の雑誌「太陽」には、「日本語版 ヴォーグの六〇年」と題する本の広告が掲載され、《証拠略》によれば、昭和五五年四月七日発行の「MODE et MODE No.195」には、ヴォーグ六〇年展についての記事が掲載され、その記事の中で、「ファッション雑誌の中でも常に世界の最高峰として君臨し、ファッションをリードし続けている『ヴォーグ』。」(一三二頁)と記載されていることがそれぞれ認められる。
(h) その他
《証拠略》によれば、昭和三五年八月二八日発行の「朝日ジャーナル」の写真集「ローマ」についての文中(二二頁)で、写真家ウイリアム・クラインについて、「『ヴォーグ』のファッション写真に縦横の手腕を見せたりしている。」との記載があることが認められる。
《証拠略》によれば、昭和五二年二月一日発行の「男子専科」には、ヴォーグのイタリア版「ルオモ・ヴォーグ」誌に関する記事が掲載されていることが認められる。
《証拠略》によれば、昭和五三年九月発行の「雑誌新聞総かたろぐ」には、「VOGUE アメリカ版」、「VOGUE フランス版」、「VOGUE HOMMES」及び「VOGUE PATTERNS」の紹介(六一四頁)がされていることが認められる。
《証拠略》によれば、昭和五七年三月八日発行の朝日新聞には、A・リーバーマン編「ヴォーグ・ブック・オブ・ファッション・フォトグラフィ」の紹介記事が掲載されていることが認められる。
<3> 以上に認定の事実を総合すると、本件商標の出願時である昭和五八年一二月はもちろん、その登録時である昭和六二年七月においても(引用商標の著名性が本件商標の出願時後に衰えたことを認めるに足りる証拠はない。)、引用商標は、日本国内において、原告(当時は、コンデ・ナスト社)の発行している世界的に著名なファッション雑誌である「VOGUE」(「ヴォーグ」)誌の題号として、服飾関係のデザイナーはもちろん、ファッションに関連する商品の取引者、需要者間において広く知られていたものと認められる。
<4> 被告は、我が国における「VOGUE」誌の販売部数が少ないこと等を理由に、「「VOGUE」誌は婦人服飾関係の専門家あるいは婦人服飾関係に強い関心を持つ者のみを読者層とする特殊な雑誌であって、我が国における著名度は限られたものである旨主張するが、被告主張の販売部数が少ないこと等の事情も、前記認定の引用商標の著名性を左右するものとは認められず、他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。
(2) 混同を生ずるおそれについて
<1> 《証拠略》によれば、本件商標の一部を構成する「ノエル」、「NOEL」は、フランス語に起源を持つ「クリスマス」や「クリスマスの祝歌」の意味を有する語であることが認められる。しかしながら、我が国においては、フランス語は英語ほど普及しておらず、さらに、英単語としても、「Noel」が我が国においてさほど知られた単語とは認められない。
上記認定を左右するに足りる証拠はなく、上記認定に反する被告の主張は、採用することはできない。
<2> 前記(一)で認定したとおり、引用商標は、日本国内において、世界的に有名なファッション雑誌である「VOGUE」(「ヴォーグ」)誌の題号として、ファッション関連商品の取引者、需要者の間において広く知られていたものであるところ、本件商標の指定商品は、前記説示のとおり、第一七類「被服、その他本類に属する商品」であり、そのうち「被服」はファッションに関連する商品の典型である。
そして、本件商標は「ヴォーグ」、「VOGUE」をその構成の一部とするものであるが、「ヴォーグ」、「VOGUE」は、前記のように、本件商標の登録出願時である昭和五八年一二月までに、我が国において、引用商標がファッション雑誌の題号としてファッションに関連する商品の取引者、需要者に広く知られていたのに対し、「ノエル」、「NOEL」はその意味がさほど知られていたとは認められないことからすると、ファッションに関連する商品である被服の取引者、需要者が五音と比較的短い本件商標が付された被服製品に接すれば、引用商標との構成上の相違にもかかわらず、「ヴォーグ」、「VOGUE」の部分に着目して、ファッション雑誌である「VOGUE」誌を連想し、上記被服製品が原告、又は原告と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品ではないかと、その出所について誤認混同するおそれがあるものと認めることができる。
<3>(a) 被告は、本件商標中の仮名文字及び欧文字の各文字は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔で書してなり、構成各文字は外観上まとまりよく、一体に表わされ、これにより生ずる「ノエルヴォーグ」の称呼も冗長とはいえず、よどみなく一気に称呼し得るものであり、さらに、外観、観念も引用商標とは異なるから、一体不可分の商標として認識される旨主張する。
確かに、「ヴォーグ」、「VOGUE」は、本件商標の語頭ではなく、語尾にあり、しかも、商標登録上、「ノエル」、「NOEL」との間に間隔やハイフンがあるわけではない。しかしながら、「NOEL」と「VOGUE」は、それぞれ造語ではなく、意味をもった既成語であり、前記認定のとおり、「VOGUE」はファッション雑誌の題号として広く知られているが、「NOEL」はさほど知られていないことからすると、本件商標は、称呼上も、外観上も、「ノエル」と「ヴォーグ」との間、及び「NOEL」と「VOGUE」との間で自然に区切って称呼され、認識されると認められ(なお、《証拠略》によれば、被告が本件商標と社会通念上同一性の範囲内の使用(商標法五〇条)であると主張する実際の使用態様においても、「ノエル」と「ヴォーグ」との間、及び「NOEL」と「VOGUE」との間に間隔を開けて使用しているものがある)、被告が証拠を提出して挙示する前半部分と後半部分の結合が密接な「ノービゲン」と「ビゲン」の例や、「サンアンソニー」と「ソニー」の例の場合とは異なるものである。したがって、ファッション関係の商品である被服の取引者、需要者が本件商標に接すれば、本件商標から、「VOGUE」を連想するというべきであり、これに反する被告の主張は採用することができない。
(b) また、被告は、昭和五八年ころより、毛皮・宝飾等のファッション事業へも事業を拡大し、商品「帯留、毛皮、宝飾品」等の新しいブランドを「ノエルヴォーグ」、「NOELVOGUE」と定め、昭和五九年には、「ノエルヴォーグ」、「NOELVOGUE」ブランドの毛皮、宝飾品等を取り扱うノエルヴォーグ事業部を発足させ、「ノエルヴォーグ」、「NOELVOGUE」ブランドの毛皮、宝飾品等の販売を行うとともに、新作発表会、展示会等を継続して開催し、現在に至っていると主張し、このように長年にわたり本件商標を使用してきた結果、一般の取引者、需要者が被告の使用に係る本件商標に接するときは、これを一体不可分の商標と認識し、本件商標は引用商標とは明確に区別されているとみるのが自然である旨主張する。
しかしながら、本件商標の実際の使用態様は、「ノエル」と「ヴォーグ」との間、及び「NOEL」と「VOGUE」との間に間隔を開けて使用している場合があり、前記認定の引用商標の著名性との対比において、引用商標と本件商標とが明確に区別され、混同を生じない程度にまで本件商標が使用され、広く知られていることを認めるに足りる証拠はないから、この点の被告の主張も採用することができない。
(c) 被告は、「VOGUE」が既成語である点も、混同を生ずるおそれの判断に当たり考慮すべきである旨主張するが、造語ではない既成語であっても、その使用により獲得した著名性の程度によっては、商標法四条一項一五号にいう混同を生ずるおそれの問題を生じさせることは当然であるところ、前記認定の事実によれば、引用商標には上記にいう程度の著名性があると認められるものであるから、被告の上記主張も採用することができない。
また、引用商標が原告のハウスマークでない点も、上記混同を生ずるおそれがあるとの認定を左右する事情ではない。
(d) さらに、被告は、原告においては多角経営も見られず、ライセンス事業も見受けられないとの事情も考慮すべきである旨主張するが、弁論の全趣旨によれば、営利企業においては、自己の事業に関連する分野に進出して多角経営やライセンス事業を行うことは、当然行われていることであり、原告(当時は、コンデ・ナスト社)のような出版社であってもその点は同様であると認められ、また、ファッションに関連する商品の取引者、需要者も同様に出版社であっても関連する事業分野に進出して多角経営やライセンス事業を行うものと認識していると認められるから、原告(又はコンデ・ナスト社)が現実には多角経営やライセンス事業に進出していなかったとしても、そのことは、上記混同を生ずるおそれの判断を左右するものではないといわなければならず、この点の被告の主張も採用することができない。
(三) 結論
以上によれば、「本件商標をその指定商品に使用しても、これよりファッション雑誌に使用されている「VOGUE」商標を想起するとは判断し得ず、結局、本件商標は、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。」との審決の判断は誤りであり、原告主張の取消事由は理由がある。
三 よって、原告の本訴請求を認容することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する(平成一〇年七月二八日口頭弁論終結)。
(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 市川正巳)
裁判官 浜崎浩一は、転補のため署名押印することができない。
(裁判長裁判官 永井紀昭)